2011年3月20日日曜日

心配な流言飛語と過剰な自粛ムード

 「ほうれん草と牛乳が汚染されているってよ」
 「また~、そんなことを言う~」
 「だって、テレビで言ってたよ」

 これは日常的な茶の間での会話の一コマだ。

 その後、報道や新聞等を読めば、一部で放射線が基準値を超えたものもあったようだが、直接的に人体に影響が出る程度ではなかった。
 また、それは一部であり、福島県・茨城県の農産物や酪農製品がすべて汚染されていることを意味していない。
 意味していないが、この報道を境に、この地域の農産物や酪農製品、食品加工品にいたる製品がキャンセルされたりスーパーの棚から撤去されたりしているのは事実である。
 さらに、この地域以外の全く関係ないほうれん草までも売れなくなっているというから、風評被害の底知れぬ猛威に改めて恐怖を覚えた。
 同じ報道でも視る人・聞く人・読む人によって、捉え方は間逆になることもある。報道に携わる人々はこの辺の事情を常に念頭において報道してほしい。困るのはワイドショー的な番組でコメンテーターの心無い一言などは十分にチェックしてほしい。

 悪意をもって流言飛語を流す人はごく一部だろう。
 問題なのは、何気ない一言が流言飛語の発端になったり、発信者になったりするのである。いわゆる風評被害につながる一言である。

 流言飛語によって起こった象徴的な事件として、有名なのは「豊中信用金庫の取付け騒動」。
 これは、豊中信用金庫に就職が決まった女子高校生に対してその友人が電車の中で言った不用意な、根拠のない一言だった。
 「豊中信用金庫は危ないって言ってたわよ」

 「流言飛語は賢者で止まる」
 このデマは何度か賢者によって打ち消されたが、ある婦人の目の前で「ああ、豊中信用金庫さん?今日150万円おろしに行きます」
 の一言が決定的なパニックの引き金になった。
 今回のひどさは賢者であるべき報道が引き金となったことを肝に銘ずべきだろう。司令塔であるべき政治の責任も問題だろうが、報道関係は単に政府がしっかりしていないからだと責任転嫁するだけではあまりにも無責任である。

 次に過剰な自粛ムードだ。
 こちらも厄介な問題だ。各種のコンサートが中止になり、プロ野球もサッカーも自粛ムードに包まれている。三社祭も早々と中止を決めた。
 甚大な被害を受けた被災者の気持ちを思えば、中止せざるを得ない。というのが主たる理由だが簡単に自粛してほしくない。
 というのは、現在日本の経済はなかなか立ち直れず苦しい状況にある。そして今回の東日本の広い地域で深刻な災害を被った。さらに自粛によって経済の停滞を産み出してはならないと思う。一つの大きなイベントが中止されれば、小さな会社は倒産するかもしれない。職を失う人も多く生まれるに違いない。
 このままでは、被災者を支援しなければならない側の体力がそがれ、支援どころではない状況に陥りかねない。
 ただ、首都圏の場合は東北電力や東京電力管内の電力供給不足の問題を抱えているので、簡単な問題ではないが、知恵を出し合って乗り切り、これ以上自粛ムードが広がらないことを願うしかない。

 そんな折、またしてもコメンテーターの何気ない一言が気になった。
 思うように進まない避難生活者に、旅館やホテルも協力してはどうかという案を出し、
「いまどき旅行する人もいないだろうから・・・」というのである。聞きようによっては、いまどき旅行する人は不謹慎な人と取れなくもない。非常にメンタルになっている現況にあっては、不用意な一言が、「不謹慎」の大合唱を誘発する恐れがあることも心してほしい。

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